R3.11.8の財政制度分科会より(調剤報酬改定に関わること)
いくつかのキーワード、キーセンテンスを抜粋します。
財務省から厚労省への意見→これからお互いの考え方のすり合わせ→たたき台を作り→骨子としてまとめ、微調整
という流れになるはずなので、予測と準備はしておくが、先走らないように気を付けたい。
「対人業務への転換が求められているが、技術料に占める調剤基本料、調剤料、薬学管理料の割合はほとんど変化しておらず、調剤基本料や調剤料に依存した収益構造は依然として継続している。」
「地域支援体制加算の実績要件と地域連携薬局の要件がリンクしていない。制度化された地域連携薬局に対して調剤報酬上の評価をすることが望ましい。」
「かかりつけ薬局・薬剤師以外の処方箋受付における負担のあり方についても検討を深めるべき。」
「処方箋の集中率が著しく高い薬局や敷地内薬局については調剤基本料の見直しを着実に進めるべき。」
「後発医薬品調剤体制加算は、廃止を含めた見直しをし、減算対象を大幅に拡大するなど減算中心の制度に見直すべき。」
「患者の通院負担の軽減、利便性の向上、コロナ禍でのニーズの増大もあり、リフィル処方を時機を逸することなく導入すべき。」
「多剤・重複投薬、長期処方の課題については、取り組みを強化すべき。診療報酬における多剤・重複処方について、減算等の措置を導入・拡充すべき。」
「自殺対策は大きな課題であり、向精神薬の過量処方を問題視。」
調剤に関するところしかピックアップしていない。診療報酬、薬価改定に関わるところもじっくり読んで、有機的につなぎ合わせて、予測・行動をする必要がある。
自分で言っておいてなんだが、下二つは先走りか。こういう動きがあるなら薬剤師がこう動きやすいな、とか。
薬局ヒヤリ・ハット共有すべき事例(2021年No10)
『レセコンの入力間違いによる薬剤取り違え』
【事例詳細】
以前よりベタニス錠50mgが処方されている患者が、今回からベオーバ錠50mgに変更となっていたが、事務員は前回と同じであると思い込みベタニスのまま入力。薬剤師は印刷された薬袋でピッキングし、患者から指摘され発覚。
【背景】
慣れがあり、決められた手順を遵守しなかった。
【薬局からの改善策】
処方箋を見て調剤することを徹底する。レセコンに入力した内容を処方箋と突合する。交付時に患者と一緒に薬剤を確認する。
【機構からのポイント】
両剤とも同じ効能効果。かつ通常1日50mg。販売名1文字目が同じ、一般名も類似。事例が複数報告されている。
調剤は処方箋に基づいてい行うことが基本。似ているリストや、注意ラベルを貼付するなども有効。
(私見:個人的には類似名称リストや「他規格あり!」のような注意喚起ラベルはあまり好みではない。棚がそればっかりになってしまう。「絶対に処方箋と照らし合わせる」というルールを無機的に守ればいい。)
『患者の生活状況』
【事例詳細】
ラツーダ錠20mg 1日1回1錠 朝食後が初めて処方された。患者から朝食はあまり食べないと聴取した。ラツーダは食事の影響を受けやすいため食後になっていることを疑義照会したところ、夕食後に変更になった。
【薬局での取り組み】
朝食をとらない患者もいるため、食生活について深くヒアリングを実施する。
【機構からのポイント】
適用上の注意:本剤の吸収は食事の影響を受けやすいので、食後に服用するよう指導すること。
(添付文書より、空腹時に比べて食後で、Cmax2.4倍、AUC1.7倍)
『同成分の重複』
【事例詳細】
クリニックAよりイルアミクスLD、ラベプラゾール10の処方を応需。手帳は持参していなかったため、帰宅後、電話にて自宅の併用薬を確認したところ、以前入院していた医療機関Bから同一の薬が処方されていたことがわかった。クリニックAに問い合わせ後、削除となった。
【推定される要因】
患者は複数の薬局を利用しており、お薬手帳を薬局ごとに使い分けていたため、これまで処方箋を受け付けていた薬局は重複処方に気づかなかったものと思われる。
【薬局での取り組み】
今後もお薬手帳の確認を徹底する。お薬手帳の活用方法を指導していく。
【機構からのポイント】
お薬手帳を適切に使用できるようサポートすることが求められる。お薬手帳の確認はもちろん、口頭でも手帳に期しあのないものも丁寧に確認することが必要である。
薬剤の重複が解消した後は、患者の体調変化の有無についてフォローアップを行うことが望ましい。
(私見:今回のことに限ったことではなく、疑義照会して満足。とならないようにしなくてはならない。
今まで飲んでた薬がなくなったら、血圧はどうなるか?半減期から抜けきるまでの期間をざっくり計算し、血圧を自宅ではからせ、定期的に電話確認を実施し、必要があれば病院に情報提供を実施するべき。)
2021年12月に収載予定のAG(オーソライズドジェネリック)
メディパルさんのクリニカルクラウドから一部引用。個人的に超オススメサイトの一つ。
先発名 | 商品名 |
---|---|
コムタン錠 | エンタカポン錠「サンド」 |
サンリズムカプセル | ピルシカイニド塩酸塩カプセル25mg、50mg「DSEP」 |
ダイアート錠 | アゾセミド錠30、60mg「DSEP」 |
アーチスト錠 | カルベジロール錠1.25、2.5、10、20mg「DSEP」 |
ブロプレス錠 | カンデサルタン錠2、4、8、12mg「武田テバ」 |
ザルティア錠 | タダラフィル錠2.5、5mg錠ZA「シオエ」 |
ベシケア錠、OD錠 | ソリフェナシンコハク酸塩錠2.5、5mg、OD錠2.5、5mg「日医工」 |
パタノール点眼液 | オロパタジン点眼液0.1%「サンド」 |
ベガモックス点眼液 | モキシフロキサシン点眼液0.5%「サンド」 |
カンデサルタンは、すでに「あゆみ」がAGとして発売されているが、「武田テバ」よって、製薬企業まで同一の医薬品が発売されることになる。
私事だが、最近、患者さまから「タダラフィル、飲み続けることになるからGEでいいんだけど・・・できればAGがいいな」って言われてたからHOT
AGと先発品の同等性について。
AGは明確には定義されていないが、一般的には、原薬・添加物・製造方法等が同一のものとされている。逆を言えば異なる部分もある。製造企業、製造場所(工場)が異なったり。
工場が異なれば先発品と違う機械を使う可能性もあるため、微妙な差異がでる可能性あり。(ないことを証明するために各種試験を実施するのだろうが)
名称以外、すべてが同一に作られているものをオートライズドジェネリックって、何かで読んだ気がする。同じラインで自動的にできるからオートって。
製造企業・製造工場の違いで問題があらわになっているわけではないが、そういうこともあると頭の片隅に入れておくといいかもしれない。
一般用医薬品のリスク区分の変更(フェキソフェナジン小児用)
R3.11.9付で、フェキソフェナジン(15歳未満への用法及び用量が定められているもの)が第一類医薬品から第二類医薬品に区分変更された。
現在、対象商品は「アレグラFXジュニア」のみ
医薬品・医療機器等安全性情報(No.387)
医薬品副作用被害救済制度は国家試験でもほぼ確実に出題されますね。
どんな事例が認められるか・認められないか、どんな手当が支給されるか。など。問題作りやすい。
医薬品副作用被害救済制度
認められた事例
(1)インフルエンザワクチンにより脊髄炎が生じ、医療費・医療手当が給付された
(2)アセトアミノフェン錠により中毒性表皮壊死症(ライエル症候群)が生じ、医療費・医療手当・遺族年金・葬祭料が支給された
(3)スルバクタム・セフォペラゾンNa静注用によりアナフィラキシーショック及び続発した低酸素脳症が生じて障害となり、医療費・医療手当・障害年金が給付された(薬品一部略)
(4)一般用医薬品により尿閉及び続発した尿路感染が生じ、医療費・医療手当が給付された
認められなかった事例
ラミクタール(ラモトリギン)関連
ラミクタールはH20.10の承認時より皮膚障害に関して、用法用量を遵守するよう注意喚起がなされていた。しかしながらその後も重篤な皮膚障害の報告が続いていたためH24.1に医薬品の適正使用のお願い。H27.2に安全性速報(ブルーレター)が発出されている。R1.10に医薬品の適正使用のお願いが再度発出されている。
(1)ラモトリギン錠を気分障害に用い、グルクロン酸抱合を誘導しない薬剤を併用する処方において、初回から1日75mgで開始したため
(2)ラモトリギン錠をてんかんに用い、単独で1日25mgで開始していたが、最初の2週間は1日1回25mgとすべきところ、6日後に50mgに増量されたため
必要な検査が実施されていない事例
(1)ケアラム(イグラチモド)を25mgで開始し、投与開始2週間後に血液検査を実施、17日後に1日50mgに増量されたが、その後、肝機能障害が認められるまでの約30日間は血液検査が実施されていなかったため
(2)慢性腎臓病、血清Ca値上昇の既往がある高齢患者において、eGFR低下・sCr値の上昇傾向が認められていたにもかかわらず、高Ca血症による急性腎不全と診断されるまでの約2年間、血清Ca値の測定をせず、エディロール(エルデカルシトール)の投与を継続したため
「禁忌」患者に使用された事例
リウマトレックス使用開始から約5年半後に非B型非C型肝硬変と診断され、その後も肝不全や腹水貯留が出現するも約2年継続されていたため
医師の指示によらず、自己判断で服用した事例
ジスロマック、ディレグラ、新ジキニン顆粒による急性汎発性発疹性膿疱症(AGEP)となったが、ジスロマックは以前処方された残薬を自己判断で服用していたため
副作用既往歴のある患者に、同じ医薬品が投与された事例
ナトリックスにより低Na血症を生じた既往があったが、血中Na濃度を測定することなくナトリックスが処方されて、低Na血症が再度生じているため
アレルギー反応に伴う急性冠症候群=コーニス症候群について
コーニス症候群と考えられる国内症例が集積しており、セフォペラゾン・スルバクタムの使用上の注意喚起に追記したが、R3.10時点で国内外のガイドライン等での定義が確認できないこと、国内において認知度が高くないと判断したことから、アレルギー反応に伴う急性冠症候群と記載した。
疾患概念
症候群としては標題の通り。タイプが3つに分類される。
タイプⅠ:もともと狭窄のない冠動脈に攣縮をきたすもの。
タイプⅡ:もともと存在していた冠動脈プラークが破裂し急性冠症候群をきたすもの。
タイプⅢ:冠動脈ステント留置例においてステント内血栓症をきたすもの。
疫学・原因・診断・治療
これらは気にするほどの記述はなかった。アレルギー反応のため。
・認知度が低いため、文献報告数は少ない可能性がある。
・アレルギー反応の原因となるものはいずれもコーニス症候群を生じる可能性がある。
・確立した診断基準はない。
・アレルギー反応の治療と急性冠症候群の治療を同時に行う。
薬局ヒヤリ・ハット共有すべき事例(2021年No9)
公益財団法人日本医療機能評価機構|薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業
にて、定期的に公開される「共有すべき事例」。
薬局からの報告ベースに、分析も加わり、少し長めになっているので、さらに簡潔にまとめてみようと思う。
『計数間違い』
【事例詳細】
クラリスロマイシン錠200「サワイ」 2T(1回量)4T(1日量)1日2回84日分
総量336Tのところ、168Tで交付。患者→医療機関→薬局への連絡で発覚。
【背景】
非結核性抗酸菌症の治療にクラリスロマイシン800mg使用を知らなかった。
1回量と1日量が併記してある処方箋に不慣れだった。
【薬局からの改善策】
適応によって投与量が異なることの認識、知識の共有。
処方箋の書き方への留意。
【機構からのポイント】
計数間違いには、調剤監査支援システムの利用、薬袋に記載された内容と薬剤の突合、薬剤交付時の患者との相互確認などが有効な手段である。
2010年に厚生労働省「内服薬処方せんの記載方法~~」には、内服薬処方箋記載の在るべき姿として、「分量」については最小基本単位である1回量を記載することを基本とし~~。
(私見:ただのまとめなのに私見を書くのはどうかと思うが・・・。今回の薬局からの改善策では根本の改善にはならない。根性論、精神論になってしまっている。原因はヒューマンエラーであるところを「注意する、気を付ける、留意する」などでは解決にならない。)
『病態禁忌』
【事例詳細】
ロキソプロフェン、レバミピド、レルパックスが処方された患者の併用薬にエフィエント、既往歴に心筋梗塞。レルパックスは心筋梗塞の既往禁忌なので、問い合わせ。レルパックスが削除になった。
【推定される要因】
処方医は患者の症状に意識が向き、基礎疾患・既往歴を見落とした。
『処方医への不適切な情報提供(検査前の休薬)』
【事例詳細】
エクメットHD服用中の患者が、脳梗塞疑いのため造影剤を使用するMRI検査を受けると薬剤師に話した。造影剤を使用する検査であればエクメットHDを中止する必要があると考えたが、医療機関からは服用中止の指示はなかった。薬剤師は患者のお薬手帳にコメント記載、添付文書を挿み、検査前に医師に見せるように患者に説明。検査は直前に中止され、延期になった。
【推定される要因】
医療機関はお薬手帳を確認したようだが、エクメットHDがメトホルミン製剤であると気付かなかった可能性がある。
【薬局での取り組み】
薬剤を交付する際、患者から検査等の情報を積極的に収集する。
<注意>MRI検査で使用する造影剤はヨード造影剤ではなくガドリニウム造影剤なので、メトホルミン製剤の投与を中止する必要はありません。(薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業 追記)
(私見:当時の薬剤師の認識・知識によって意味合いがかわってくる。標題の不適切な情報提供だったかどうかが変わる。メトホルミン=造影剤時に中止と認識しているのか。メトホルミン=ヨード造影剤時に中止と知っているが、MRIの造影剤が何かわからなかったのか。
ヨード造影剤が使われるのはCTやX線、ANGIO。MRIではガドリニウム)