薬局ヒヤリ・ハット共有すべき事例(2022年No4)
薬剤取り違え
【事例詳細】
【般】タダラフィル口腔内崩壊錠5mg:ZA 1回1錠 1日1回 夕食後の処方があり。タダラフィルOD錠5mgZA「トーワ」を調剤するところ、タダラフィル錠20mgAD「TE」を取り揃え、患者に薬剤を交付。40日間服用後に薬剤が違うことに気づき、薬局に連絡がきた。
【背景・要因】
薬剤師による二重チェックを行っていたが、調剤者・監査者ともに規格の照合をしなかった。交付者や患者と一緒に薬剤を確認しなかった。
【薬局での取り組み】
取り違えを防ぐため、同成分で効能効果や企画が異なる後発医薬品の保管場所を分ける。
調剤者・監査者・交付者の各々が薬剤の名称・規格を確認する。交付者は患者と一緒に薬剤を確認する。
【機構からのポイント】
PDE5阻害剤であるタダラフィル製剤は、効能効果が異なる製品が販売され、後発品は先発品の名称にちなみ、「ZA」「AD」「CI」を付けて区別されている。
疑義照会・処方医への情報提供、名称類似薬の処方間違い
【事例詳細】
医療機関Aから苓姜朮甘湯が処方された。電子薬歴を確認すると2カ月前に医療機関Bから苓桂朮甘湯が処方され、当薬局で調剤していた。患者から、医療機関Bで処方されていた漢方をかかりつけの医療機関Aで処方を依頼していたことがわかったため、疑義照会を行った結果、苓桂朮甘湯に変更となった。
【背景・要因】
漢方製剤の名称が類似していることが処方間違いの要因と考えられる。
【薬局での取り組み】
誤った薬剤の交付を未然に防ぐため、電子薬歴などの電子機器を積極的に利用する。普段から患者とコミュニケーションをとり、情報を得やすい関係性を構築する。
【機構からのポイント】
患者から聴取した内容や薬歴から、患者の症状を把握し、処方された漢方製剤の効能効果が一致しているかなどを検討し、疑わしい点があれば疑義照会を行う必要がある。
調剤監査支援システムなどの電子機器の活用は、有用である。
疑義照会・処方医への情報提供、同成分の重複
【事例詳細】
60歳代の患者に医療機関Aの整形外科からサインバルタカプセル20mg 1回1カプセル 1日1回 朝食後14日分と、タリージェ錠、ノイロトロピン錠が処方された。薬歴を核にしたところ、医療機関Bの精神科からデュロキセチンカプセル20mg「日新」1回3カプセル 1日1回 朝食後 28日分が処方されていることがわかった。整形外科に情報提供を行った結果、サインバルタカプセル20mgは削除となった。
【背景・要因】
整形外科の処方医はお薬手帳を確認しなかったか、あるいは、確認したがデュロキセチンがサインバルタの後発品と認識していなかった可能性がある。
【薬局での取り組み】
薬歴やお薬手帳を見て、同成分の重複がないか確認する。
【機構からのポイント】
デュロキセチン製剤の効能効果には、うつ病の他に、糖尿病性神経障害や慢性腰痛などがあり、精神科、内科、整形外科などの複数の診療科から処方される可能性がある。
薬局ヒヤリ・ハット共有すべき事例(2022年No3)
交付後の説明間違い
【事例詳細】
ミノサイクリンを交付した患者から、片頭痛があるため市販薬バファリンEXを服用してよいかと電話で問い合わせがあった。バファリンEXにロキソプロフェンが含まれていることを確認し、患者へ併用は問題ないと回答した。電話を切ったのち電子薬歴の併用薬に登録したところ、水酸化アルミニウムが含まれており、ミノサイクリンと相互作用があることが分かった。患者に電話して、服用間隔を2時間以上あけるように伝えた。
【背景・要因】
当薬局で取り扱う一般用医薬品の種類が少なく、販売する機会があまりないため、知識が不足していた。
【薬局での取り組み】
一般用医薬品との飲み合わせを尋ねられた際は、主成分だけでなく有効成分や添加物まで確認する。電子薬歴に併用薬を登録し、成分の重複・相互作用をチェックする。バファリンにはさまざまな種類があるため正確な商品名を聞き取る。
【機構からのポイント】
電子薬歴の重複や相互作用を検索・表示する機能は有用である。
疑義照会・処方医への情報提供、剤形
【事例詳細】
初めて来局の患者に【般】オキシコドン錠10mg 1回1錠1日2回が処方された。オキシコドン錠10mg「第一三共」であれば1日4回投与なので疑義照会したところ、処方医は徐放錠を処方するつもりであったことがわかり、【般】オキシコドン徐放錠10mg(乱用防止製剤)1回1錠1日2回に変更になった。患者にオキシコドン徐放錠10mgNX「第一三共」を交付した。
【推定される要因】
処方医は普通錠と徐放錠があり、それぞれに乱用防止製剤があることを把握してなかったと推測される。
【薬局での取り組み】
それぞれ用法が異なることを薬局内で共有した。
【機構からのポイント】
NXがついている乱用防止製剤は主成分のオキシコドンの他に、麻薬拮抗剤のナロキソンを含有している。経口投与した場合、ナロキソンは肝初回通過効果による速やかな代謝を受け作用を発現せず、オキシコドンを阻害することはないが、不正な方法として錠剤を溶かして静脈内注射した場合はオキシコドンに拮抗する。
疑義照会・処方医への情報提供、投与量
【事例詳細】
処方医は小児の患者にリスペリドンとして0.5mg(リスパダール細粒1% 0.05g)を処方するつもりであったが、オーダリングシステムに0.5gと入力し処方箋が発行された。薬剤師は処方箋通りに薬剤を調製し、家族に交付した。患者が2回服用したのちに傾眠の症状がみられたため、受診したところ過量投与が発覚し、緊急入院となった。
【推定される要因】
調剤時、1人薬剤師であり通常より少ない人数で業務を行っていた。薬局にリスパダール細粒1%の在庫はなく、薬剤を急いで調達するため、処方監査より発注業務を優先して行った。患者の家族が薬剤を取りに来るまで時間がなく焦っていた、処方医は専門医だったため疑いをもたなかった。
【薬局での取り組み】
薬剤が不足した場合は、処方医が意図する薬物療法への影響の有無を検討したうえで、納品後に配送するか、再来局してもらう。
【機構からのポイント】
10倍量が誤って処方された事例である。散剤の投与量間違いの報告は後を絶たない。
調剤時に薬剤が不足した場合は、患者を待たせている状況から焦りが生じ、通常の業務手段を遵守できないことがある。正しい調剤ができるよう無理のない業務手順を定めることが有用である。
薬局ヒヤリ・ハット共有すべき事例(2022年No2)
交付時の患者間違い
【事例詳細】
同じ名字の患者が2人いた。薬剤師は患者Aをフルネームで呼び、カウンターでもフルネームで確認をしたが、患者の反応はなく。薬を見せながら説明を行い、お薬手帳と一緒に薬剤を交付した。その後、患者Aから待ち時間が長いと訴えがあったため確認すると間違って患者BにAの薬を交付していたことがわかった。
【推定される要因】
同姓の人が待合室にいる場合は処方箋に付箋をつけることになっている。付箋はついており薬剤師も中止していたが、防ぐことができなかった。
【薬局での取り組み】
高齢の患者は耳が遠い場合があることに留意する。
【機構からのポイント】
同姓ではなくても音が似ている氏名などの聞き間違いは誰にも起きる可能性がある。氏名をはっきりと伝える必要があるがプライバシーの問題もある。引換券や受付番号の活用は有用である。
疑義照会・処方医への情報提供、投与量
【事例詳細】
フォシーガ錠5mg 1日1回 1回1錠が処方された。投与量から糖尿病の治療と推測したが、付き添いの高齢者施設の看護師に確認したところ、心不全の治療目的として追加された。疑義照会にて10mg 1日1回 1回1錠に変更になった。
【推定される要因】
処方医が、慢性心不全の用量を知らなかった可能性。オーダー間違いの可能性。
【薬局での取り組み】
初回の薬剤を調剤する際は、処方内容と合致するかを検討する。
【機構からのポイント】
効能効果の追加に伴い、用法用量や重要な基本的注意などが変更になることがあるため、その都度、添付文書やIF、RMPなど、最新の情報の収集に努める必要がある。
疑義照会・処方医への情報提供、同効薬の併用
【事例詳細】
関節リウマチのため、プログラフ、プレドニン、メトトレキサートが処方されている患者に、リヴォック錠7.5mg 1回1錠 1日1回が初めて処方された。電子薬歴システムへ入力した際に併用禁忌のアラートが出たため添付文書を確認すると、タクロリムスと併用しないことと記載されていた。さらに、製薬会社に問い合わせたところ、プレドニン、メトトレキサートとの併用実績はあるが、プログラフとの併用実績はなかった。処方医に伝えたところ、プログラフが削除となった。
【推定される要因】
用法及び用量に関連する注意には記載されているが、警告、禁忌には記載されていないため、気づきにくい。
【薬局での取り組み】
添付文書の警告や禁忌の項目だけでは併用の適否を判断することが難しい場合があるとわかった。情報が足りない場合は、製薬企業からも情報を集める。
【機構からのポイント】
添付文書の情報だけでは不十分と考え、積極的に情報収集を行った好事例である。
DSU No.307(2022.4)
ブリリンタ錠(チカグレロル)
重大な副作用に追加
高度な防湿ブロック、洞停止等の徐脈性不整脈
オフェブカプセル(ニンテダニブ)
重要な基本的注意に追加
ネフローゼ症候群があらわれることがあるので、定期的に尿たんぱく検査
重大な副作用に追加
ストックリン錠(エファビレンツ)
重大な副作用に追加
精神神経症状
レニベース錠(エナラプリル)
禁忌に追加
アンギオテンシン受容体ネブリライシン阻害薬(サクビトリルバルサルタンナトリウムス水和物=エンレスト錠)を投与中あるいは投与中止から36時間以内
リポバス錠(シンバスタチン)
禁忌に追加
アンギオテンシン受容体ネブリライシン阻害薬(サクビトリルバルサルタンナトリウムス水和物=エンレスト錠)を投与中あるいは投与中止から36時間以内
製造販売・効能等追加承認(2022/03/28)
製造販売
カログラ錠120mg
一般名 :カロテグラストメチル
効能効果:中等症の潰瘍性大腸炎(5-アミノサリチル酸製剤による治療で効果不十分な場合)
用法用量:1回960mgを1日3回食後
禁忌 :妊婦、重度の肝機能障害
重大な副作用:進行性多巣性白質脳症(PML)
頻度の高い副作用:肝機能異常、頭痛、悪心、関節痛、上気道炎
相互作用:CYP3A4を阻害する。また活性代謝物はOATP1B1及びOATP1B3の基質
食事の影響:カロテグラストメチルのCmax及びAUCは食事に33.8%、20.9%低下し、カロテグラストのCmax及びAUCは食事により18.5%、2.4%低下。
注意点 :PMLの発現リスクを低減するため、投与期間は6カ月までとする。6カ月以内に寛解したらそこで終了する。再投与する場合は8週間以上あけること。維持療法には使用しないこと。吸湿性が強い。
忘れたら:記載なし。
ケレンディア錠10mg、20mg
一般名 :フィネレノン
効能効果:2型糖尿病を合併する慢性腎臓病(末期腎不全又は透析施行中の患者を除く)
用法用量:1日1回、eGFRが60以上なら20mg、eGFRが60未満なら10mgから投与開始し、血清カリウム値、eGFRに応じて、投与開始から4週間後を目安に20mgへ増量する。
禁忌 : イトラコナゾール、リトナビル、アタザナビル、ダルナビル、ホスアンプレナビル、コビシスタット、クラリスロマイシン、投与開始時に血清カリウム値5.5mEq/Lを超えている患者、重度の肝機能障害、アジソン病
重大な副作用:高カリウム血症
頻度の高い副作用:低血圧、糸球体ろ過減少
相互作用:CYP3A4にて代謝されるため、CYP3A4との相互作用が強い薬は禁忌
食事の影響:食後に単回経口投与したとき、空腹時投与時と比較してAUCは21%増加し、Cmaxは19%低下した。空腹時投与でバイオアベイラビリティは44%
注意点 :高カリウム血症があらわれることがあるので、原則として血清カリウム値が4.8以下の患者に投与開始。投与開始時・再開時・増量から4週後にカリウム測定をし、その後も定期的に測定。降圧作用に基づくめまいあり、運転注意。
忘れたら:記載なし
ジスバルカプセル40mg
一般名 :バルベナジン
効能効果:遅発性ジスキネジア
用法用量:1日1回40mg。最大1日80mg。
禁忌 :先天性QT延長又はTorsades de pointesの既往
重大な副作用:傾眠・鎮静、重篤な過敏症、錐体外路障害、悪性症候群、
頻度の高い副作用:倦怠感、
相互作用:未変化体はCYP3Aで代謝され、活性代謝物は主にCYP2D6及びCYP3Aで代謝される。P-gpを阻害する。
食事の影響:バルベナジンは食後投与は空腹時と比較してCmax54%、AUC87%
注意点 :1日1回40mgを1週間以上投与し、忍容性があり、効果不十分な場合に増量を検討。空腹時は食後よりBAがあがるため、用量調整の前後で服用条件を変えないこと。傾眠、鎮静のため運転禁止。
忘れたら:記載なし
セムブリックス錠20mg、40mg
一般名 :アシミニブ
効能効果:前治療薬に抵抗性又は不耐容の慢性骨髄性白血病
用法用量:1回40mgを1日2回、空腹時に経口投与
禁忌 :過敏症
重大な副作用:骨髄抑制、膵炎、QT間隔延長、感染症、血管閉そく性事象
頻度の高い副作用:頭痛、悪心、発疹、疲労
相互作用:CYP2C9を阻害する
食事の影響:Cmax、AUCは空腹時に対して、低脂肪食摂取後で0.652と0.700、高脂肪食摂取後で0.318と0.377
注意点 :25℃以下で保管。食後で血中濃度がさがるため、食事の1時間前から食後2時間の間の服用はしない。
忘れたら:記載なし
効能等追加
ジセレカ錠100mg、200mg(フィルゴチニブ)
中等症から重症の潰瘍性大腸炎の治療および維持療法(既存治療で効果不十分な場合)の効能追加
タリージェ錠2.5mg、5mg、10mg、15mg(ミロガバリン)
神経障害性疼痛へ効能変更
製造販売・効能等追加承認(2022/03/11)
効能等追加
クロミッド錠50mg(クロミフェン)
ル・エストロジェル0.06%(エストラジオール)
生殖補助医療における調節卵巣刺激の開始時期の調整、及び凍結融解胚移植におけるホルモン補充周期
ジュリナ錠0.5mg(エストラジオール)
生殖補助医療における調節卵巣刺激の開始時期の調整、及び凍結融解胚移植におけるホルモン補充周期
ディビゲル1mg(エストラジオール)
生殖補助医療における調節卵巣刺激の開始時期の調整、及び凍結融解胚移植におけるホルモン補充周期
エストラーナテープ0.72mg、0.36mg(エストラジオール)
①生殖補助医療における調節卵巣刺激の開始時期の調整、及び凍結融解胚移植におけるホルモン補充周期
②凍結融解胚移植におけるホルモン補充周期
ジェミーナ配合錠(レボノルゲストレル・エチニルエストラジオール)
生殖補助医療における調節卵巣刺激の開始時期の調整
ルナベル配合錠LD、ULD(ノルエチステロン・ノルエチニルエストラジオール)
生殖補助医療における調節卵巣刺激の開始時期の調整
ヤーズフレックス配合錠(ドロスピレノン・エチニルエストラジオールベータデクス)
生殖補助医療における調節卵巣刺激の開始時期の調整
ヒスロン錠5(メドロキシプロゲステロン)
調節卵巣刺激下における早発排卵の防止
デュファストン錠5mg(ジドロゲステロン)
調節卵巣刺激下における早発はイランの防止
薬局ヒヤリ・ハット共有すべき事例(2022年No1)
薬剤取り違え
【事例詳細】
【般】テルミサルタン40mg・ヒドロクロロチアジド配合錠の処方。テルチアAP「DSEP」を調製するところ、事務員が誤ってテラムロAP「DSEP」をピッキング。
【推定される要因】
どちらもテルミサルタン40mg含有かつ名称類似。繁忙時間帯だった。
【薬局での取り組み】
配合剤の先発・後発販売名や一般名記載をまとめた表を作成し、掲示。
【機構からのポイント】
この事例の他にもテルチアとテラムロの取り違え事例が多く報告されている。
疑義照会・処方医への情報提供、禁忌
【事例詳細】
40代女性の膀胱炎治療にレボフロキサシン錠500mg 1回1錠1日1回夕食後 5日分が処方。妊娠希望で不妊治療を行っており妊娠の可能性があった。禁忌に該当するため、書籍「妊娠・授乳と薬」を参考に代替薬を提案したところ、セフカペン錠100mg 1回1錠1日3回毎食後へ変更になった。
【推定される要因】
処方医は不妊治療中であることを把握していなかった。
【薬局での取り組み】
妊娠可能な年齢の女性に処方された際は、妊娠の有無・可能性を確認する。
【機構からのポイント】
妊娠に関する情報を患者から収集するために、適正使用に必要であることを説明し理解してもらう必要がある。
疑義照会・処方医への情報提供、患者の状況
【事例詳細】
オルテクサー口腔用軟膏0.1%が処方された患者が、プロ野球選手であることを聴取しドーピングの禁止物質にならないか質問を受けた。日本アンチ・ドーピング機構のホームページで糖質コルチコイドの口腔内局所使用は禁止になっていたので、疑義照会したところ削除となった。
【推定される要因】
処方医は上記薬剤の使用禁止について把握していなかったと思われる。
【薬局での取り組み】
プロスポーツ選手が活動している地域に薬局があるため、ドーピングに関する知識を習得する。
【機構からのポイント】
うっかりドーピングの防止に関わることが求められる.
参考: